土壌洗浄工法

水による湿式分級により、水に溶解した重金属類とシルト・粘土分に濃集した 重金属類を汚染土から分離・除去する工法です。

汚染土壌中の重金属類

重金属汚染土の中の重金属類の多くは、土粒子の表面に付着しており、さらに土粒子の間隙水中に溶存イオンとして存在しています。

土粒子の粒径と比表面積の関係は、一般的には、粒径が小さくなるほど比表面積は大きくなります。
土粒子の表面に付着している重金属類は、礫・砂と比べて土粒子の粒径が小さいシルトや粘土分に多く付着する傾向にあります。

土壌洗浄工法は、水を使用して汚染土を湿式分級し、シルト・粘土の微細粒子を除去する事によって汚染土中の重金属類の含有量(存在量)を低減する土壌浄化技術です。

土壌洗浄工法の概念

以下に示すグラフは、鉛汚染土2試料を粒径毎に分けた(分級)場合の鉛含有量の変化を示しています。
いずれも分級前の原土に比べて、分級後の微細粒径の範囲で鉛含有量が増加している事が判ります。

したがって、水を使用して汚染土を湿式分級し、シルト・粘土の微細粒子を除去する事により、汚染土中の重金属類の含有量(存在量)を低減する事が可能となります。

高濃度汚染に対する土壌洗浄助剤

高濃度に汚染された汚染土の場合、水による湿式分級洗浄だけでは指定基準適合まで浄化する事が困難な場合があります。
こうした高濃度汚染土は、設計段階で洗浄が不可と判断し場外搬出を適用せざるを得ませんでした。

そこで、土壌洗浄助剤を用いた新たな土壌洗浄工法を開発しました。
本工法は、土壌洗浄の際に土壌洗浄助剤を使用する事で、土粒子の表面に付着する重金属類を水中に抽出後、土壌洗浄助剤中に含まれる吸着剤で重金属類を捕捉し、土粒子への再付着を防止する事が出来ます。

これにより、重金属類は、洗浄水中に維持されたままとなり、その後の洗浄工程で汚染土中から除去されます。
コスト面では、従来の水洗浄工法と大きな差は無く、洗浄助剤と添加装置を加えるだけで可能となります。
また、シルト・粘土分の処分量が大きく増える事もありません。

土壌洗浄工法の特徴

■オンサイト土壌洗浄プラントにより重金属類を低減・浄化する工法

■場外搬出処理に比べて低コスト・低負荷型の工法

■高濃度汚染土には土壌洗浄助剤を適用することで対応可能

■水は循環利用により使用量を抑制

■多くの施工実績に裏付けられた信頼の施工品質

適用可能物質

■土壌汚染対策法に定める第二種特定有害物質9項目
・砒素(As)
・鉛(Pb)
・六価クロム(Cr6+)
・シアン(CN)
・フッ素(F)
・ホウ素(B)
・カドミウム(Cd)
・総水銀(Hg)
・セレン(Se)
■土壌汚染対策法に定める第一種特定有害物質の一部(ただし、拡散防止設備が必要)
■ダイオキシン含有土
■油含有土

施工事例

・塗料工場跡地

・精密機械工場跡地

・金属加工工場跡地

・地下水由来のもらい汚染

施工方法

現場内にオンサイト土壌洗浄プラントを組み立て、重金属汚染土を湿式分級により洗浄します。
高濃度汚染土の場合は、洗浄過程で洗浄助剤を添加・混合・すすぎを実施します。洗浄濁水は、凝集沈澱による濁水処理を行い、処理水として再生し、洗浄水として循環利用します。
これにより、水の使用量を最小限度に抑える事が可能となります。
洗浄濁水から分離された微粒子(シルト・粘土)は、凝集沈澱処理によりスラリーとして脱水工程へ移送され、脱水ケーキとして排出されます。

脱水ケーキは、重金属濃度が高濃度になった汚染土として場外搬出処分を行う必要があります。
脱水ケーキの発生量は、一般的に汚染土の全量に対し10~30wt%とされます。
これは土壌洗浄工法の適用による汚染土の減容化の効果であり、全量(100wt%)を場外搬出をする場合と比べて、場外搬出処分量(費)を格段に減らす事が可能となります。

品質確認

品質確認後、洗浄土は、現場内に埋め戻します。

品質確認は、土壌汚染対策法に基づき、100m3毎に5箇所ずつ試料を採取し、5試料を混合して1検体とし公定法分析を行い、溶出量試験の結果によって確認します。
公定法分析では、試料採取から分析結果判明まで約1週間程度の期間を要する為、その間は現場内で仮置きします。

循環水については、2週間に1回公定法分析を実施し、品質を確認します。
公定法分析は外部機関に依頼しておこないますが、合わせて現場分析による管理もおこないます。
迅速分析機器を現場で操作できる体制を構築し、1日以内で暫定的な品質確認を行います。
現場分析は、公定法分析と比較して値の精度はやや劣りますが、公定法分析結果が判明するまでの間に品質確認を行う事が可能となる為、重要な管理手法です。

最近は、高精度な迅速分析機器が開発され、現場品質管理の精度も格段に向上しています。